日付変更線を越えそうな時間。
今にも眠りそうな彼に添い寝して、今日行った現場の様子を話す。
今日の現場は昔二人でよく過ごした場所だったから、ついテンションが上がっていつもより饒舌になってしまう。
彼は眠い目をショボショボさせながらも、うんうんと相槌を打ちながら俺の話を聞いてくれた。
それがどうしようもなく嬉しくて、もっと嬉しくなりたくて、二人しかいないのに内緒話みたいに彼の耳元で囁く。
「……あのね。初めてキスした場所も通ったよ」
「あの公園?」
「うん。覚えてたんだ?」
「覚えてるよ。忘れっこないじゃん」
ふふっ、って優しく彼が笑う。
眠気もあるせいか、いつも以上にふんわりとして可愛い。
あの日まだ幼い俺逹は、思春期特有の話の流れで興味本位でキスをした。
大人になる実験のひとつだったのに妙にドキドキして、誤魔化すように笑い合った。
それが今は……
「あのね」
「うん?」
「キス、したい」
「どうしたんだよ、いきなり」
「ダメなの?」
「……いいよ」
目を瞑れば長い睫毛が一際際立つ。
あぁ、綺麗だな…と思いながら唇を重ね、細い身体を抱き締める。
あの時とは気持ちも違うキスに胸が熱くなる。
大人になる実験の結果は、彼が好きだという事を導いてくれた。
大人になって半ば破れかぶれで告白して、戸惑いながらも受け止めてくれた彼。
年を重ねたなりのキスが、こんなにも愛しい。
そっと唇を離すと、彼が俺の髪を優しく撫ぜた。
「今夜はちゃんと寝れそう?」
「うん。お前がいるから平気」
「よかった。じゃ、いっぱい寝なよ。また明日から忙しいんだろ?」
「うん、そうする」
「おやすみ」
「おやすみ」
彼の胸に顔を寄せると、彼の腕が俺を包んでくれる。
ずっとそうしてきてくれた自然な仕草に口元が緩む。
そのうち規則正しい寝息が聞こえてきて、俺もつられるように眠気がやってきた。
一人の時は不安になって眠れないのに。
彼のぬくもりは、俺から不安を取り除いてくれる。
無くてはならない場所。
いなくてはならない人。
ずっと一緒にいたい人。
大切な人のぬくもりの中、心地いい眠りに身を任せた。