……重い。
身体がホールドされてて、寝返りが打てなくて重い。
うっすら目を開けてみれば、熟睡してるマルの顔が間近にあった。
部屋も天井もシーツの肌触りも馴染みがない。
あ、そっか。そうだった。
昨夜はマルの家に泊まったんだっけ。
……また、こういう関係になったんだっけ。
俺をしっかりホールドしてる腕をどかそうとすれば、ん〜と不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。
「逃げないってば」
逃げない、そう、逃げない。
別れを切り出した時の俺は逃げてた。
マルが普通の幸せを掴めるように、って思ったから。
でも、逃げ切れなかった。
またこうしてマルの腕の中にいる。
「もう逃げない、よ」
逃げられない、ってわかったから。
マルからも、自分の気持ちからも。
「本当に?」
声のする方向を向けば、マルがじっと俺を見てた。
「ごめん、起こしちゃった?」
「テツが逃げちゃうかと思った」
「これじゃ逃げらんないよぉ」
「逃がさないもん」
ふふっ、って耳元で笑うから、息がかかってくすぐったい。
「テツは、俺のモノ。わかった?」
「はーい」
「ちょ、なにそれ」
「え〜?だめぇ?」
「可愛いすぎんだけど」
首筋にいくつもいくつもキスされて、変な声が出そうになるのを堪える。
なんだよ、もうっ。
こんなに甘えてくるヤツだったっけ?
「我慢しなくていいのに」
「……っ」
「ねぇ、まだ朝まで時間あるよ」
そう言うや否や、マルの手が俺の身体を撫ぜ回してくる。
首筋だけでなく、鎖骨や胸元にまで口付けながら。
「な、にやってんだ、よっ…」
「休みだからいいじゃん」
「午後から用事が、あるってば」
「だから?」
「だからって……えぇ?」
「もうスイッチ入っちゃったからだめだよ。今までの分、取り戻そ?」
「むりっ…!もうおじさんだからっ」
「おじさんがあんなに色っぽい?ガキん時みたいにがっついちゃったもん、俺。テツの色気ヤバいって。女よりセクシーだもん」
「ばっ…ばっかじゃねーのっ?!」
「うん、バカだよ。テツバカだもん。大好きだよ、テツ」
うっとりとした口調で囁かれたら、何も言い返せなくなる。
嬉しいっていうのが伝わってきたし。
「テツ、さいこー…」
散々抱かれて薄れてく意識の中で、マルが幸せそうに笑うのが見えて。
ま、いっか。って思ってしまった。
結局は好き、なんだから。