上に覆い被さるように青井がいて、キスしながら制服を脱がされて。
この流れに慣れて来てるのに、何か違うなぁってぼんやりと思う。
ひんやりとした空気が素肌を滑って、気付いた。
今日は青井の部屋だから、か。
部屋から、ベッドから、本人以外のあちこちからも青井の匂いがしてきて変な感じ。
「いてっ」
首筋に走る微かな痛み。
「心がどっかいってるだろ」
青井を見れば、眼鏡を外した瞳がちょっと不機嫌そう。
「だって、ココですんの初めてだからさ」
「嫌?」
「嫌とかそういうんじゃなくて…、なんつーか……ココで青井が毎日生活してんだなーって考えてた」
不機嫌そうだった瞳が和らいで、俺の頬にくすぐったいようなキスをする。
「この部屋には足りないモノがあるんだ」
「足りないモノ?そういえば、テレビとかないな」
「そういうモノじゃなくて」
「違うの?じゃ、何が足りないんだよ」
うん、って前置きするように青井が俺の前髪を撫ぜる。
その仕草が気持ちよくて思わず目を閉じると、唇が重なって舌が絡みついてくる。
やばい、キスに溺れて意識が飛びそうになる。
答えを聞き逃すもんかと青井の胸を軽く叩けば、離した唇から答えが降ってきた。
「蒼が足りない」
「え、お、俺…!?」
「あぁ。この部屋で俺が一人でいる時も蒼の事を感じられるように、今からココに蒼の痕いっぱい残しておいて」
……それ、わかる。
俺の部屋は、俺の布団は、青井の存在が残ってるから。
一人でいる時も、一人じゃないような気分になる。
その気分は、俺をほっとさせて妙に落ち着くんだ。
いつも傍にアイツがいる、って。
「いいぜ。いっぱい残せるようなコトしろよ」
「いいね、その挑戦に乗った。泣き言は聞かないからな」
「泣かないっつーの」
青井の手によって溶かされた俺は、青井のベッドに沁み込んでいく。
一人の時間に、ちらっとでも俺の存在を感じてくれればいい。
傍に俺という人間がいる事を思い出してくれればいい。
とどめを刺すように、枕に爪を立てた。