小さなストーブがひとつある部屋。
まったりとした2人の時間。
俺は受験する大学の資料を読み、俺の膝を枕にして漫画を読んでる蒼。
寒さを理由に珍しく蒼の方から甘えて来てくれ、寒いのも悪くないと思う俺。
環境が変わりつつある中で、貴重な2人の時間だ。
資料を読み終えて眼鏡を外すと、蒼が漫画から俺へと目線を移す。
そして、妙な事を言い出した。
「なぁ、青井」
「なに?」
「女を抱くのと、男を抱くのって同じくらい気持ちいいの?」
「…………は?」
蒼の目は冗談を言ってる目じゃない。
まさか俺以外に気になる男が出来たとか?しかもリードしたくなるような?
「浮気は許さないよ」
「ふぇ?」
「誰か他のヤツを狙ってるんじゃないだろうね?」
「はぁ?」
「まさかライブハウスに出入りしてるヤツ?」
「なんで?そんな訳ないじゃん」
「そうじゃなかったら、なんでそんな事を聞くの?男を抱いてみたくなったとしか思えないよ」
自分は蒼と付き合う前は散々遊んできたのを棚に上げ、眼鏡を掛け直し蒼を睨む。
きょとんとした顔をしても無駄。浮気なんて冗談じゃない。
暫く沈黙が続いた後、蒼が俺の目を見て言った。
「俺が男を抱くとしたら、青井しかいないよ?」
「…………え」
「浮気なんか面倒臭いからしないし」
浮気しない、っていうのは安心したけど……その前に爆弾発言したよ、な。
蒼は俺を抱いてみたいのか?
「あはははは、青井ってば超ビックリした顔してる〜」
蒼が漫画を抱えるようにして笑い出した。
未だに頭の中が整理出来てない俺は、その笑う顔を見つめるしかない。
それすらおかしいのか、蒼はまだ笑ってる。
そのうち「あ〜おなかいたーい」って言いながら身を起こした。
「笑いすぎて喉渇いちゃった。飲み物取ってくるわ」
「あぁ……」
「いつもイジメられてるお返し」
「え」
「あはははは、おもしれ〜」
笑い声と共に部屋を出て行く蒼。
その姿は可愛くも見えるけど、実は小悪魔なんじゃないかと思わせる。
イジメるのも何も、それは蒼が煽るような表情を見せるから止まらなくなるだけで……
しかもそんな事言われたら、誘われてるのかと思ってしまうだろ?
「そういうのわかってやってるのかな」
せっかく頭に入れた大学のデータは、蒼の爆弾で破壊された。
ストーブのようにじわじわ上がる熱はどうすればいい?