「あーん」
放課後の寄り道。ハンバーガーを齧ろうとしたら、俺にポテトを一本向けてる青井。
条件反射でパクッと食べると、青井は今度は俺にって感じでポテトを指差す。
これは、あーんってすればいいのか?
「ほれ」
にやっと微笑んでから、青井がパクッとポテトを俺の手から食べた。
そして、言った。
「よし、笹本に勝った」
「へ?」
「笹本は蒼にあーんってされてないだろ?だから、俺の勝ち」
ふふん、って得意そうな顔をして、青井がコーヒーに口を付ける。
その顔が妙にツボって、つい笑ってしまった。
青井が言ってるのは、教室で祐樹が菓子を俺の口に入れてた事だろう。
そんなのに対抗するなんて、青井も可愛いトコあるじゃん。
「あははははっ、なんだよそれ〜。青井、超おもしれぇ」
「だって、ヤキモチ妬いた」
「祐樹が菓子を俺に食わせんの、珍しい事じゃないじゃん」
「珍しくないから妬けるんだよ」
「もしかして今までもそう思ってた?」
「当たり前」
「なんだよ、それぇ」
「今日は嫉妬し過ぎて、一日アイツの事睨んでたよ」
「全然気付かなかった」
「蒼はおいしそうに食べてただけだからね」
「だって、新発売の菓子だったかさぁ」
「ふーん」
「っていうか、青井も別に教室でもやりゃいいじゃん」
青井がコーヒーを置いて、意味ありげニヤリと笑った。
……嫌な予感がする。
「俺が教室でこういうコトしてもいいんだね」
「え?あ、えーっとぉ…」
「楽しみにしてる」
「え?え?」
「やりたいようにやらせてもらうよ」
「青井?何言ってんの?」
「ここじゃ話せないから、後でゆっくりとわからせてあげるよ」
「…………」
「はい、あーん」
すっげー嫌な予感がする。
口に入れられたポテトを噛みながら、青井が変な方向に走りませんように、と密かに願った。