■可愛い対抗心?

 



「あーん」

 


 放課後の寄り道。ハンバーガーを齧ろうとしたら、俺にポテトを一本向けてる青井。
 条件反射でパクッと食べると、青井は今度は俺にって感じでポテトを指差す。
 これは、あーんってすればいいのか?

 


「ほれ」

 


 にやっと微笑んでから、青井がパクッとポテトを俺の手から食べた。
 そして、言った。

 


「よし、笹本に勝った」
「へ?」
「笹本は蒼にあーんってされてないだろ?だから、俺の勝ち」

 


 ふふん、って得意そうな顔をして、青井がコーヒーに口を付ける。
 その顔が妙にツボって、つい笑ってしまった。
 青井が言ってるのは、教室で祐樹が菓子を俺の口に入れてた事だろう。
 そんなのに対抗するなんて、青井も可愛いトコあるじゃん。

 


「あははははっ、なんだよそれ〜。青井、超おもしれぇ」
「だって、ヤキモチ妬いた」
「祐樹が菓子を俺に食わせんの、珍しい事じゃないじゃん」
「珍しくないから妬けるんだよ」
「もしかして今までもそう思ってた?」
「当たり前」
「なんだよ、それぇ」
「今日は嫉妬し過ぎて、一日アイツの事睨んでたよ」
「全然気付かなかった」
「蒼はおいしそうに食べてただけだからね」
「だって、新発売の菓子だったかさぁ」
「ふーん」
「っていうか、青井も別に教室でもやりゃいいじゃん」

 


 青井がコーヒーを置いて、意味ありげニヤリと笑った。
 ……嫌な予感がする。

 


「俺が教室でこういうコトしてもいいんだね」
「え?あ、えーっとぉ…」
「楽しみにしてる」
「え?え?」
「やりたいようにやらせてもらうよ」
「青井?何言ってんの?」
「ここじゃ話せないから、後でゆっくりとわからせてあげるよ」
「…………」
「はい、あーん」

 


 すっげー嫌な予感がする。
 口に入れられたポテトを噛みながら、青井が変な方向に走りませんように、と密かに願った。

 

 

end