■奏鳴曲〜君だけに奏でる恋歌〜 第12話

 

 ――――午前0時十五分

 


 ライブ終了後の後片付けが終わって、自分の部屋に戻る頃には日付が変わってた。
 予想通り飲みに行ってしまった叔父さんに、青井が泊まる事だけ告げた。
 客間の押入れに布団があるから出してやれ、とだけ言われた。
 ……でも、それどころじゃなかった。

 


「ちょ、ちょっと待て、青井っ。電気くらいつけさせろよっっ」
「待てないよ」
 部屋に入った途端抱き締められて、電気も付いてない暗い部屋でキスされる。
 さっきの余韻があるのか、すぐ身体も熱くなってきちまう。心なしか青井もいつもより強引な気さえする。
 深いキスを何度もされて、身体の力が抜けてきて青井に支えられてしまう。
「少しは、感じてくれた?」
 少しどころじゃねぇよ…ぎっと睨んでやると、青井がふっと笑う。
「立ったままじゃツライよね」
 青井が俺の身体を支えながら、場所を移動する。移動した先は、引きっぱなしになっていた布団の上だった。
 しかも横たえられて、俺に覆いかぶさるようにして青井がいる。
 この体勢って、なんかヤバイ気がする…。
 ちょっとした危機感を覚えつつも、唇を塞がれてしまえば腑抜けになっちまう。
 唇だけじゃなくて、頬や額…そして耳や首筋にまでキスしてくるもんだから、背筋はゾクゾクしてくるし、ますます身体は熱くなってくるし……それに。
「あ、青井っ、もうヤダ。ヤバイって!」
 これ以上されたら、我慢出来なくなる。青井の前でアノ処理も出来ないしつらくなる一方だと思ったから、腕を突っぱねて抵抗する。
「二宮。楽にしてやるから、少し我慢して」
 楽にしてやるからって、どういう事だ?
 言葉の意味を考えているうちに、青井の手が動いた。
  ドクン!!
「どっ、ドコ触ってんだよっっ!!!」
 予想外の青井の行動に驚いて、その手を払いのけようとしたけど失敗に終わった。
 抵抗を許さないかのように、またキスを仕掛けられる。
 かちゃりとベルトを緩める音が響く。ジッパーを下げる音が、やけに生々しい。
「……んんっ!」
 青井の手が、直接俺のモノに触れた。…マジ?
 それだけでもイキそうになっちまって、身体が震えた。
「…やだ…っ、あお、い…」
 下に触れられたまま、今度はシャツを捲りあげられた。
 青井の舌が俺の胸を彷徨うように動いて、違う刺激となって襲ってくる。
「……はぁっ…、も、ヤバ…い、って……」
 限界だと思った瞬間、突起を強く吸われた。背筋に快感が突き抜ける。
「…………っっっ!!!」

 


 目の前が、チカチカした。
 身体から、一気に力が抜けた。
 ……やべぇ、めちゃくちゃ恥ずかしい…!!!
 まさか自分以外の他人の手で、青井の手でイっちまうなんて…
 どういう顔していいかわからなくなって、両手で顔を隠した。
 楽にするってこういう意味だったのかよ…。
 確かに楽にはなったけど、刺激強すぎ。乱れちまった息もなかなか整わない。
「二宮、顔見せて」
「……やだ」
 青井に両手首を掴まれて、脱力中の俺はあっさりとガードを解かれた。
 せめて視線は合わすまいと、横を向く。
「……まいったな」
 ぽつりと青井が口にした言葉にかっとなって、真正面を向く。
「参ったのは、こっちの台詞だよ!いきなりんな事するなんて……って、青井?」
 青井がじっと俺を見てる。目が怖いくらいに。
 それに息も荒いし、切羽詰ってそうな顔してる。
「二宮、可愛すぎるよ」
「はぁっ!?」
「途中でやめようと思ってたのに、我慢出来そうにないよ。…最後までしていい?」
「え、なに、最後まで…って?」
 左手首を押さえてた手が外れた。そしてその手が、ありえない場所に触れた。
「…ココに入れたいんだけど」
「はいっっ!!?」
 そんなトコに入るのかよっっ!?…っていうか、仮に入ったとしても、それってセックスと一緒になっちまうよなぁ?それこそ冗談じゃ済まされなくなる。
 好きだって実感したばっかでいきなりこんな展開になるなんて、頭がついていかない。
 青井はただ雰囲気に流されてるだけだろうし、一種の遊びかもしんねーけど…俺は、そんなのじゃ片付けられない。
 やめとかないと自分が苦しくなるだけだとか、好きなら許しても…とか思っちまうし。
 あ〜〜〜〜〜、いったいどうしたらいいんだ!?
 どうしていいかわからなくて途方に暮れてしまうと、青井が焦れたように俺の内股を撫ぜてきた。
 その感覚に、またぞくりとしてしまう。

 


「……欲しいよ、蒼」

 


 青井が、初めて俺の下の名前を口にした。

 


 この状況で呼ぶなんて、反則だ。
 それだけで、頭がまっさらになっちまった。
「ずりぃ、ソレ…」
 青井の顔が近付いて、熱い息が耳にかかった。
「ズルくてもいいよ…。蒼が、欲しい」
 ……降参。
 降参っていうよりも、ノックアウト?
 頭の中には、選択肢がひとつしか浮かんで来なくなっちまった。
「……いい、ぜ」
 一言告げると、青井は俺の耳に音を立ててキスをした。
「サンキュ」
 優しい口調で言ったかと思うと、青井は上半身を起こして自分のシャツを脱ぎ捨てた。
 暗いからぼんやりとしか見えないけど、綺麗なシルエットだ。
 もう、後戻りは出来ねぇな…
 青井の体温が、近付いて来る。
 俺は覚悟を決めて、眼を閉じた。

 

 

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