――――午前0時十五分
ライブ終了後の後片付けが終わって、自分の部屋に戻る頃には日付が変わってた。
予想通り飲みに行ってしまった叔父さんに、青井が泊まる事だけ告げた。
客間の押入れに布団があるから出してやれ、とだけ言われた。
……でも、それどころじゃなかった。
「ちょ、ちょっと待て、青井っ。電気くらいつけさせろよっっ」
「待てないよ」
部屋に入った途端抱き締められて、電気も付いてない暗い部屋でキスされる。
さっきの余韻があるのか、すぐ身体も熱くなってきちまう。心なしか青井もいつもより強引な気さえする。
深いキスを何度もされて、身体の力が抜けてきて青井に支えられてしまう。
「少しは、感じてくれた?」
少しどころじゃねぇよ…ぎっと睨んでやると、青井がふっと笑う。
「立ったままじゃツライよね」
青井が俺の身体を支えながら、場所を移動する。移動した先は、引きっぱなしになっていた布団の上だった。
しかも横たえられて、俺に覆いかぶさるようにして青井がいる。
この体勢って、なんかヤバイ気がする…。
ちょっとした危機感を覚えつつも、唇を塞がれてしまえば腑抜けになっちまう。
唇だけじゃなくて、頬や額…そして耳や首筋にまでキスしてくるもんだから、背筋はゾクゾクしてくるし、ますます身体は熱くなってくるし……それに。
「あ、青井っ、もうヤダ。ヤバイって!」
これ以上されたら、我慢出来なくなる。青井の前でアノ処理も出来ないしつらくなる一方だと思ったから、腕を突っぱねて抵抗する。
「二宮。楽にしてやるから、少し我慢して」
楽にしてやるからって、どういう事だ?
言葉の意味を考えているうちに、青井の手が動いた。
ドクン!!
「どっ、ドコ触ってんだよっっ!!!」
予想外の青井の行動に驚いて、その手を払いのけようとしたけど失敗に終わった。
抵抗を許さないかのように、またキスを仕掛けられる。
かちゃりとベルトを緩める音が響く。ジッパーを下げる音が、やけに生々しい。
「……んんっ!」
青井の手が、直接俺のモノに触れた。…マジ?
それだけでもイキそうになっちまって、身体が震えた。
「…やだ…っ、あお、い…」
下に触れられたまま、今度はシャツを捲りあげられた。
青井の舌が俺の胸を彷徨うように動いて、違う刺激となって襲ってくる。
「……はぁっ…、も、ヤバ…い、って……」
限界だと思った瞬間、突起を強く吸われた。背筋に快感が突き抜ける。
「…………っっっ!!!」
目の前が、チカチカした。
身体から、一気に力が抜けた。
……やべぇ、めちゃくちゃ恥ずかしい…!!!
まさか自分以外の他人の手で、青井の手でイっちまうなんて…
どういう顔していいかわからなくなって、両手で顔を隠した。
楽にするってこういう意味だったのかよ…。
確かに楽にはなったけど、刺激強すぎ。乱れちまった息もなかなか整わない。
「二宮、顔見せて」
「……やだ」
青井に両手首を掴まれて、脱力中の俺はあっさりとガードを解かれた。
せめて視線は合わすまいと、横を向く。
「……まいったな」
ぽつりと青井が口にした言葉にかっとなって、真正面を向く。
「参ったのは、こっちの台詞だよ!いきなりんな事するなんて……って、青井?」
青井がじっと俺を見てる。目が怖いくらいに。
それに息も荒いし、切羽詰ってそうな顔してる。
「二宮、可愛すぎるよ」
「はぁっ!?」
「途中でやめようと思ってたのに、我慢出来そうにないよ。…最後までしていい?」
「え、なに、最後まで…って?」
左手首を押さえてた手が外れた。そしてその手が、ありえない場所に触れた。
「…ココに入れたいんだけど」
「はいっっ!!?」
そんなトコに入るのかよっっ!?…っていうか、仮に入ったとしても、それってセックスと一緒になっちまうよなぁ?それこそ冗談じゃ済まされなくなる。
好きだって実感したばっかでいきなりこんな展開になるなんて、頭がついていかない。
青井はただ雰囲気に流されてるだけだろうし、一種の遊びかもしんねーけど…俺は、そんなのじゃ片付けられない。
やめとかないと自分が苦しくなるだけだとか、好きなら許しても…とか思っちまうし。
あ〜〜〜〜〜、いったいどうしたらいいんだ!?
どうしていいかわからなくて途方に暮れてしまうと、青井が焦れたように俺の内股を撫ぜてきた。
その感覚に、またぞくりとしてしまう。
「……欲しいよ、蒼」
青井が、初めて俺の下の名前を口にした。
この状況で呼ぶなんて、反則だ。
それだけで、頭がまっさらになっちまった。
「ずりぃ、ソレ…」
青井の顔が近付いて、熱い息が耳にかかった。
「ズルくてもいいよ…。蒼が、欲しい」
……降参。
降参っていうよりも、ノックアウト?
頭の中には、選択肢がひとつしか浮かんで来なくなっちまった。
「……いい、ぜ」
一言告げると、青井は俺の耳に音を立ててキスをした。
「サンキュ」
優しい口調で言ったかと思うと、青井は上半身を起こして自分のシャツを脱ぎ捨てた。
暗いからぼんやりとしか見えないけど、綺麗なシルエットだ。
もう、後戻りは出来ねぇな…
青井の体温が、近付いて来る。
俺は覚悟を決めて、眼を閉じた。